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『カラヤンとフルトヴェングラー/中川右介』 [(そして本も)]

音楽家というものは、音楽の高みや極みを目指せば目指すほど、世俗的なものとはかけ離れていく、そう勝手に思い込んでいましたが、いい意味で裏切ってくれた本でした。

まあ、なんというドロドロした人間的な権力闘争なんでしょうか!!
一番いいオケを使って自分の思い描く音楽を作りあげたい、
そのためには、自分が頂点に立ちたい、
これは、単なる権力欲というよりは、やはり音楽家としての究極の目指すところなのでしょうが、
そのために、カラヤンを蹴落とそうとしたり、
フルトヴェングラーを邪魔だと思ったり、
人間としての醜さといえばそうですが、
ある意味エゴイスティックでないと、音楽の高みにはのぼれないと思うので、
本当におもしろく読め、野次馬的好奇心も満たしてくれた本でした。

それと、最近西欧関係のものを読むと、必ず出てくるのがユダヤのこと。
これまで無知すぎましたが、いろんなところにそのことがつきまとっていて、
世の中単純ではないことを、あらためて知らされました。

興味深かったのは、
ドイツで首相としてバイロイト音楽祭に行けば「ヒトラー以来初めて」と必ず報道されるので、歴代首相は避けてきたのに、なんとあの小泉元首相がバイロイトを訪問するということで、日本の首相を出迎えるという大義名分ができ、やっとシュレイダー首相が出席できたということ!!

小泉元首相に、そこまでの配慮があったとは、私は思えないので、単なる思いつきが歴史を動かすこともあるのだと、驚嘆しました。
(思いつきでなかったとしたら、申し訳ありません)

 

カラヤンとフルトヴェングラー

カラヤンとフルトヴェングラー

  • 作者: 中川 右介
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 新書


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コメント 16

COCO

こんにちは(^^♪

私もこの2人に関した本を昔読んだことがあります。時代背景もあり興味深く読んだ記憶があります。
内容はほとんど覚えていませんが私の読後感はどうもカラヤンの方が悪者という印象が残っています。
カラヤンは商業的にも凄く成功した人ですが、その本を読んだあとはそれだから余計生意気にも、しばらく彼の指揮するレコードを買いたくないし聴きたくないと思った時期がありました...やっぱり影響受けやすいですね(笑)
by COCO (2007-03-08 14:53) 

としゆき

こんばんは。『カラヤンとフルトヴェングラー』、読みましたか!
私も一気に読みましたが、読み物として非常に面白く書かれてますね。

歴史の読み方は難しいですが、ベルリンフィルのティンパニストだったテーリヒェン著の『フルトヴェングラーかカラヤンか』を読むと(COCOさんの読まれたのは、おそらくこの本では?)、フルトヴェングラー贔屓になってしまいます。書き手によって、指揮者の見方も色々と変わりますね。
by としゆき (2007-03-08 21:05) 

e-g-g

カラヤンの政治性と商売の上手さ(と、喧伝されていた)は、20才代半ばでクラシックを聴き始めた青年(←ワタシ)に、嫌悪感を抱かせるに充分なキャラクターでした。そんなこんなで、ろくに聴きもせずに、ずっと関心の外に置いてました。あれから三十数年、そろそろ無心?で聴いてみようかなとも思ってます。(もちろん、チャイコフスキーやベートーヴェンなど幾枚かのLP、CDは持ってますけど)

マーラー、メンデルスゾーン、ワルター、バーンスタイン、バレンボイム、ホロヴィッツ、アシュケナージ、、、ポール・サイモン、、、ユダヤ人ではない音楽家を探す方がたいへん。セルもハンガリー系のユダヤ人です。音楽の世界だけでなく、まぁ、ほんとうにいろんな分野で名を成していますよね。才能の発掘からデビュー、その後の諸々もユダヤ社会無しには成り立たない、、、このあたりはもっともっと詳しく正確に追求されている方がたくさんいると思いますので、ワタシはこのへんで。

小泉氏は歌舞伎座へ助六見物に行くのと同じ感覚でバイロイトを訪ねたのではないでしょうか。舞台の袖でワーグナーもビックリ?
純粋に無邪気にワーグナーの音楽に惚れた一国の宰相がいた。というところで止めておこう、という考えはあったかな?とも思います。

本は書店でパラパラッと立ち読みしました。で、買いませんでした。あのドロドロにまた触れる気がちょっと起きなかったもので。
by e-g-g (2007-03-08 21:13) 

ポッチ

のすけの母さん、こんばんは。
これは面白そうですね。たしかに、カラヤンについてはあまりいい話は聞きませんよね。しかも、その良くない話に説得力があるんですよね(笑)。
読みたい気もするけど、皆さんのコメントを読むとカラヤンの音楽を素直に楽しめなくなりそうだし・・・(笑)。
ヒールの指揮者カラヤンかあ・・・それはそれで興味湧いてきますね(笑)。
by ポッチ (2007-03-09 02:26) 

mozart1889

のすけの母さん、おはようございます。
この本、読みました。面白かったですね。
人間性と芸術性はいや全く別物、あのような俗物たちの生み出す音楽の何と崇高なこと。
政治力を駆使する音楽家の姿も面白く読めました。どちらも好きな指揮者です。
by mozart1889 (2007-03-09 05:35) 

のすけの母

COCOさん、こちらにもありがとうございます。
この二人に関する本は、私は初めてなんですが、カラヤンの商業主義は聞き及んでいたので、若い時分は当然反発して、えらっそうにも「カラヤンだけは聴かないゾ!」なんて言っていたものです。
皆、同じですね。
by のすけの母 (2007-03-09 14:03) 

のすけの母

としゆきさん、こんにちは。
本を買ったら、予想以上におもしろくて、私も一気に読んでしまいました。
音楽・芸術といった高尚な話ではなく、人間臭い話だったので、まるで小説のような感覚で読めました。
テーリヒェン著『フルトヴェングラーかカラヤンか』という本も興味深いです。

確かに、どんな歴史もその語り手によって多かれ少なかれ脚色されてしまうので、いろんな見方があって当然ですよね。
むしろ、万人が讃える人のほうが胡散臭いと思ってしまうところがあります(←天邪鬼!)。
by のすけの母 (2007-03-09 14:09) 

のすけの母

eguchiさん、こんにちは。
若いときは、「商業主義」なんて聞くだけで、嫌悪感いっぱいになりますよね。
青いと言われればそれまでですけれど、そういう〝純〟な気持ちが日に日に薄くなる今、かえって懐かしいです。
カラヤンは、私も若い時分は避けておりました。
でも、今は、誰で聴けばいいのか迷ったら、とりあえずカラヤン?と思ったりもします。

>ユダヤ人ではない音楽家を探す方がたいへん
作家でもそうですよね。
島国日本に安穏としている自分にとって、想像を超えた難問です。

この本は、立ち読み程度で十分とも思いますよ。
私も、そのうちブックオフへ持っていくかもしれませんし!
by のすけの母 (2007-03-09 14:17) 

のすけの母

ポッチさん、こんにちは。
この本では、どちらかといえば、フルトヴェングラーが悪者です。
ただ、単純にどちらが悪いかとか、そういうものでもないように思いました。
二人とも、いや、チェビリダッケも、本来の目的は自分の理想の音楽を求めていたところから出発しているので、私は、この本を読んで、どちらも憎めないと思っています。
それよりも、ナチ下のドイツやユダヤ人のことに関心がいきました。
by のすけの母 (2007-03-09 14:36) 

のすけの母

mozart1889さん、こんにちは。
本当にどろどろしていましたが、その根源には音楽の高みがあったのですから、それこそが芸術家の生き様だといえるのかもしれません。
むしろ、私のような凡人は、俗になろうにも中途半端で……。
やはり、あそこまでエゴを貫き通せるのも、政治と駆け引きするのも、才能ゆえだと思います。

むしろ、清廉だとか無欲だとかのほうがウソくさいですし。
これまで〝クエナイ〟と思っていたカラヤンも、結構いいヤツじゃないかと思っています。
by のすけの母 (2007-03-09 14:48) 

COCO

再びこんにちは(^^♪

この時代はみな音楽の世界だけでなく、自分が生きていくために必死だったのですね。後世その人たちの評価を沢山の人たちがしますが、私はそれぞれの生き様は見事だと思うようになりました。
ただ一つ言えることは、戦争は愚かだという事。

ナチスがユダヤ人の殺戮を日々繰り返しながら、毎夜ワーグナーのオペラに興じていたというのを聞いたことがありますが、それは残酷なことをしていることが辛くてなのだろうか?しかし先日『ルワンダの涙』という映画を観て、人間ってここまで残酷になれるんだということを再認識し、ナチスの兵隊達も無感覚になっていったのかもと...恐ろしいことですね...
by COCO (2007-03-10 12:25) 

のすけの母

戦争は、国の大儀とか威厳とかからかけ離れた、ただ生活していく人こそを犠牲にしますよね。
ドイツでは、音楽が政治と密接に結びついていたのも、悲劇のもとですね。
だから、どうすればいいのかということは、単純にこたえられることはないですが、
そう、戦争は賢くないです。
ただ、この〝平和ボケ〟と言われる日本で安穏と暮らしている日本人には言われたくない、とも言われそうで、このようなことについて語るのは、本当に本当に難しいです。
by のすけの母 (2007-03-11 13:23) 

coco

のすけの母さん、こんばんは(^^♪

宮本さん、終わりましたかぁ~私も好きなアーチストが沢山いすぎて私の心の中でも忘れていたこともあり、ファイナルって聞いて慌てたというのもあります(笑)でも、私の心の中にはやっぱり、宮本さんのステキな音楽が残り続け、終わる存在ではないようです(*^_^*)

平和ボケ...そうですね。ただ、いつも疑問は持ち続けていきたいと私は思っているんです...それは平和な日本にいる傲慢さかもしれませんが...
by coco (2007-03-11 19:52) 

のすけの母

いや、宮本さんが終わったというより、私の頭の中に、今月からサッカーの領域が多くなり、追いかけたいものがまた増えてしまい、宮本さんのことばかり思っていられない、というのが正直なところです。
宮本さんのオーボエは、私にとってはずっとずっと心の中に残ります。
それを思い出すきっかけとしてCDもこれからも聴いていきます。
ただ、「一度ライヴを体験したい」という思いがかない、ふぅーっと一息いれたところです。

それから、平和ボケというのは一般論です。
日本には日本なりの、日本ならではの平和への提言ができます。
私も疑問は持ち続けていきたいと思っています。
ただ、この手の話をブログに書くのは、非常に難しいと思ったわけです。
言葉足らずですみません。
by のすけの母 (2007-03-11 22:36) 

ヒロノミン

古いエントリーにコメントして済みません。
 このエントリーを見て、ずっとこの本を読みたいと思っていましたが、最近やっと読みました。まず、フルヴェン⇒カラヤンという継承は、当たり前のように感じていましたが、その既成概念が崩されたことと、フルトヴェングラーへの見方が変わりました。カラヤンへのイメージは変わりませんでしたが(笑)
 手持ちのフルヴェンの「バイロイト第9」の価値を見直さねばならんなーと思いはじめています。
 
by ヒロノミン (2007-05-19 12:49) 

のすけの母

ヒロノミンVさん、こんばんは。
この本、とてもおもしろく読めたのは覚えているのですが、詳細は恥ずかしながら忘れてしまっております。
この本を読んだ直後は、フルトヴェングラーのものやカラヤンのものを聴いてみようと思ったものですが、日々興味関心の対象が変化する気まぐれの私は、すっかり忘れてしまっていました!!
by のすけの母 (2007-05-19 22:11) 

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