杉山寧の青 [(そして絵も)]
先日、桜の話題に伴って、奥村土牛の「醍醐」という絵を教えていただき(レモンさん、ありがとう)、その絵が山種美術館にあるのなら行ってみたい、と思っているところです。
(ただ、「醍醐」は見られないとか……残念です)
私は、絵心はまったくなく、自分でも一切描けませんが、それでも見るのは大好きで、特にお気に入りの画家なら、画集を買っています。
うちにある画集はほとんど洋画なのですが、その中に数冊日本画の画集があり、その中の一冊が、杉山寧です。
偶然見た絵の深い深い青にひかれ、とても好きになりました。
いつ見ても、吸い込まれそうです。
「水」「皓」「穹」「ギザの月」など、あの青は、深くしかも美しく、どれだけ見ていても飽きることはありません。
また、抽象画も好きで、特にそれに名づけられた一文字の漢字の題にも惹かれました。
「耿」「灼」「柢」などが好きです。
でも、一番好きなのはやはり「水」です。
命の根源、命をはぐくむ、生きている水。
空間軸、時間軸、それぞれの無限を感じさせてくれる青が表現しています。
見ていると、静かに、しかし確実にエネルギーが満ち満ちてくる感じです。
日本画では、他には、安田靫彦も好きです。
先日、奥村土牛の画集を古本屋さんで見つけ、買ってしまいました。
それから、いよいよ明日「ダ・ヴィンチ展」が始まります。
母さま、こちらこそ、ありがとうです。
あの漢字の題は、いいですよね。
画集の目次で並んでいると、壮観です。
彼の抽象の作品で、『仮象』というものがあるのですが、この絵には一度、どこかで出会えると、いいなあ、と思っています。
杉山さんの色には、土そのものの、やわらかさがあって、形にも、丸みがあって、でも、不思議にどっしりと重くて凛々しくてね、私も好きですよ。
滝の連作と、それとあの有名な孔雀と、そして『灼』と、うーん……私、もしかすると、けっこう影響を受けているのかも知れないな、構図だとか…………(マチエールを真似して、あえなく失敗したのは、もうお話ししましたよね……)。
土牛は、『醍醐』こそありませんが、『吉野』は展示されるようですね。
それと、私の、昔、教えてもらった先生で、平岩さんと云う画家がいるのですが、ちょうど今、この山種に展示されているそうで、ついこの間、自慢?されちゃいました(……そういう事を、子供相手にもする、無邪気で楽しい爺様なのです……)。
以前に教えて戴いた、『眠りと文学』を読みました。
現――うつつ――と云う考え方が、とても面白かったです。
読書をしていて、私は、ときおり思うのですが、自分の中に、あるひとつのものが、鮮やかなイメージとして、あるいは感情として刻まれるのなら、それを実際に、実世界で、体験したのかどうかは、それ程には重要ではないのではないかな、と。
……でも、こうやって書いてしまうと、何だか過激ですね。
「ないものを、いま、ここにあるかのように書く」、それから、夢と現実との境を、はっきりとは区別しない、この辺りを、私は、常日頃、よくよく考察しているようにも思いました。
だから、この著を読んで、大いにうなずくところもあって、何となく不思議な気持ちにもなりましたよ。思っている事を、ふっと言い当てられたような感じでしょうか。
ダヴィンチ、始まりますね。
もし、お手間でなければ、東京見聞録(ふふ)も、ブログに書いて下さるとうれしいなあ、と、こっそりと心待ちにしております。
その時は、いい日和となりますように。
by (2007-03-22 22:10)
やはりレモンさんは、絵の専門家であられるだけあって、説得力がありますね。
>杉山さんの色には、土そのものの、やわらかさがあって、形にも、丸みがあって、でも、不思議にどっしりと重くて凛々しくてね
そうなんですよ。
なんとなく思っていることを、きちんと言葉にしていただけてすっきりしました。
杉山さんの絵が好きなのは、そういうわけだからなんだと思います。
「仮象」もいいですね。
あの暗い中に、ほんのり淡いあたたかいおぼろげなる光が浮かび、そこにあらわれた青、横に主張する黄。
なんてことを思って見ています。
この絵が何をあらわしているかより、この全体からにじみ出る雰囲気こそがすべてで……うまく言えませんが、好きです。
『眠りと文学』を読まれたんですね。
私は読んでから時間がたってしまっているので、記憶が曖昧ですが、
「ないものを、いま、ここにあるかのように書く」というのは、文学の有体だと思います。
先日、現在とっても売れている作家(映画化もされています)が、「経験しないことは書けない」と堂々とテレビで話しているのを見てしまい、胸が悪くなったのを思い出しました。
(また、敵を増やすような発言ですね……)
山種美術館は、とても行きたいと思っています。
桜も愛でたいですし。
ただ、当日の都合でどうなるか……でも、時間が許せば、行ってきます。
東京見聞録など上等のものは書けませんが、おのぼりさん珍道中なんぞ挑戦してみましょう(できれば)。
by のすけの母 (2007-03-23 23:24)